
[ガバナンス]
家族は企業を強くするのか ──スリーサークルモデルで紐解くファミリービジネス成長の条件
下川 政人
経営共創基盤(IGPI)マネージングディレクター
IGPIグループ共同経営者
圓城 靖浩
経営共創基盤(IGPI)ディレクター
〈要約〉
1. 「ファミリービジネス」の強さは所有構造に由来する
ファミリービジネスが業績や総資産利益率(ROA)で、非ファミリービジネスを上回る傾向は経済同友会や経済産業省の資料でも明らかになっている。その強さの源泉は、ファミリービジネス特有の所有構造に由来した、長期志向、迅速な意思決定、そして価値観の共有にある。所有と経営の近接は、中長期での経営判断を後押しするほか、経営者のリーダーシップを強化する。また、組織内での判断基準の共有も図りやすい。だが、こうした強さは保守性、独善、閉鎖性といった弱みにも変わりうる。
2. それぞれに合理的で、それぞれにズレ続ける「家族」「所有」「経営」の論理
ファミリービジネスは、よく「家族」「所有」「経営」の3つの枠組みの重なり(スリーサークルモデル)で説明される。事業の存続と発展をミッションとする「経営」、適切なオーナーシップを目指す「所有」、そして家族の繁栄を志向する「家族」。それぞれが合理的であるが故に、答えは一致しない。
また、この三つが異なるタイムスパンで変化している点も注目すべきである。経営が対応すべき技術や市場の変化は日々刻刻と進む一方、所有の論理は相続や事業承継といった特定の節目で動く。家族の価値観や関係性の変化はより緩やかで見えにくい。こうした時間軸の違いが三つの論理のズレを大きくしていく。
3. ガバナンスがズレを建設的な議論に昇華する
三つの論理のズレは自然なものでそれ自体は不可避である。このズレを健全な対立とし、建設的な議論を行うために必要なのがガバナンスだ。そこで重要なのは、共通の判断軸を持つこと、ファミリー憲章や承継方針など議論の前提となるルールを共有すること、議論の場を設けること、そして「経営」⇒「所有」⇒「家族」という順序で検討を行うことの4点である。
だが、実際のところ、きっかけは何であってもいい。最初は経営権をめぐる諍いや相続問題など「家族」起因の問題であっても、そこを出発点に「経営」と「所有」を論じ、時には外部専門家などの第三者も活用しながら望ましい「家族」の関わり方を考えることが重要だ。正しい問いと健全な対立のもとで、会社の未来に向けた議論を進めることができれば、ファミリービジネスはより強固で持続的になる。
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