
[M&A]
本気で探索しているか?――生成AI時代に問われる経営の覚悟
望月 愛子
経営共創基盤(IGPI)マネージングディレクター、取締役CFO
IGPIグループ共同経営者
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〈要約〉
1. 深化なくして探索なし、探索なき深化もない
「探索」とは、自社にとって未踏の領域を切り拓き、継続的に磨き上げ、新たな収益の柱を生み出す活動である。探索には元手が必要であり、そのためには「深化」による稼ぐ力の向上が欠かせない。単なる製品やサービスの改良ではなく、既存の知識や技術を組み合わせて新たな価値を生み出す営みを指す。探索には元手が必要であり、そのためには「深化」による稼ぐ力の向上が欠かせない。重要なのは、深化で得た資金を探索に回し、新たな収益の柱を立て、その成果を再び深化へと還す。この循環をいかに絶やさず、経営として設計できるかである。
2. 熱量とエコノミクス、そして終わりの設計が探索活動の成功条件
探索を進めるには、「市場が伸びるから」という誰にとっても同じ一般論で判断するのではなく、事業経済性や市場構造、競合環境を踏まえた実現可能性と、その事業を推進する当事者の強い熱量を備えることが欠かせない。だが、この二つも成功の十分条件とは言えない。一定期間までに新たな収益の柱へ育つ道筋が見えなければ終了させ、次の探索にリソースを回す「明るいご臨終ルール」を設けることも重要である。
3. 探索を「ごっこ」に終わらせないために
多くの企業が探索に取り組むものの、実際に収益の柱に育つケースは少ない。要因は、PoC止まりの計画、評価制度の欠如、優柔不断なリソース配分などにある。探索を形骸化させないためには、既存事業と同等の覚悟で臨み、組織の制度・文化・資金配分を探索に適した形に変える経営の意思が求められる。
4. AX時代の探索には深化の大改革との循環が求められる
ITやデータ、クラウドを活用した既存事業の効率化・高度化が求められたDXの時代に対し、AXの時代においては既存事業への生成AIの組み込み、すなわち企業OSの刷新が必須になる。そこでは、あらゆる業務・組織・経営モデルが組み換えられる「深化の大改革」が行われるため、それと循環するAX時代の探索が求められる。

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