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関西国際空港民営化プロジェクト
~国の成長戦略の第一歩を担い、巨大マーケットを開拓する~

岡田 信一郎
マネージングディレクター、IGPIコンセッション代表取締役社長
京都大学大学院工学研究科卒、コロンビアビジネススクールMBA

21兆円マーケットの突破口を開け。

公共のインフラ施設の運営権を民間企業へ譲り渡す。いわゆるコンセッションを推進することで、日本政府は今後10年で21兆円のマーケットを生み出す成長戦略を描いている。国策として動き始めたプランの先駆けとなったのが、1兆2000億円もの債務返済に苦しむ関西国際空港を大阪国際空港(伊丹空港)と統合し民営化するプロジェクト。前例のない、これほどの高額商品に買い手がつくのかどうか。一見不可能とも思われたプロジェクトの推進役として選ばれたのが、IGPI。インフラ・コンセッションの知見を有する岡田が新関西国際空港(株)の執行役員・コンセッション推進部長として出向し、指揮を担った。

「どれほど難しい案件であっても、社会的な意義が感じられれば、目先の利益には多少目をつぶってでも取り組むのが私たちのスタンスです。国の目線で見ると、インフラはどうしても造ることが目的になってしまって、その後のサービスまでは目が行き届きにくくなってしまいがち。それらをどんどん民営化させることで、利用者へのサービスが磨かれていく。そんな壮大なプランの口火を切ることは、世の中にとって非常に大きな意義があると感じていました。」


官民をつなぐパイプとしての役割。

関西国際空港と伊丹空港が統合し、それらを運営する新関西国際空港(株)が誕生した時からプロジェクトは動き出した。空港の運営権をいくらで売るのか、契約期間を何年とするのかなど、運営権売却における条件を固めるため、岡田は、国土交通省や財務省など国の担当者と打合せを重ねていった。

「運営権を売るといっても、施設の所有権は国に残るので、いわば半官半民です。国としてはもちろん、できるだけ高く売りたいし、民営化なので経営の責任はできるだけ民間企業に負ってもらいたい。IGPIは公共性の高い案件も多く手掛けており、そういった国の意向も汲み取ることができます。一方で、IGPIはビジネスのプロフェッショナル集団であり、民間の投資家とのネットワークもありますから、買い手側の感覚も掴むことができる。売りたい国と、買いたい企業のどちらもが納得できるラインで条件を固めていくにあたって、両方とつながりのあるIGPIならではのバランス感覚は、強みとなりました。」


超巨額商品の買い手は、世界で探す。

契約期間、価格、リスク分担、入札の参加資格。それらの条件を国とすり合わせると同時に、岡田は買い手を探す営業活動も行っていった。

「金額があまりにも大きいため、国内企業だけではなく、世界中から広く入札を募る必要がありました。ヨーロッパ、オーストラリア、カナダ・アメリカ、シンガポール、中東など、世界中で買い手を探し回って、気づけば地球を15周もしていたほどです。買い手の候補はどうしても空港会社が多くなるので、例えばドイツまで行ってフランクフルトの空港で会議してそのまま飛行機で戻ってくる、なんてことも日常茶飯事でしたね。」

海外企業との交渉において、いつも懸念材料となるのがリスク分担だった。

「日本が地震国であることの自然災害リスク、テロや疫病といった空港ならではのイベントリスクなど、さまざまなリスクがある商品なので、そのリスクをどちらが背負うのか絶妙なラインで線引きしていきました。例えば、関西国際空港は埋め立て地のため、いまだに地盤が沈下しているのですが、想定以上に沈下した場合にそのリスクはどちらが取るかなど、細かいところを突き詰めていくことで、売り手と買い手が納得できる商品へと落とし込んでいったのです。」


入札は、海外企業と国内企業の連合で。

入札の参加資格には、空港の経営経験があることと、日本の商習慣に通じていることを組み込んだ。それらの資格を同時に満たす事業者であるには、海外の企業と日本の企業に手を組んでもらうことが必要だった。世界中を飛び回ると同時に、国内の買い手を探すため、岡田はさらに東京と大阪の間を毎週何度も往復することとなった。

「海外の企業は空港運営経験のある企業を想定して、国内企業には『日本の商習慣』の部分を担ってもらうつもりでした。日本企業の説得は、結果的に海外企業以上に大変なものになりました。空港を運営したことのない相手に、1兆円を超える空港の運営権を売るわけですから。投資した分のリターンをしっかり得られることを説明すれば担当者は理解してくれるのですが、空港が本業でない会社のトップに価値とリスクを理解してもらい、意思決定にまでもっていくのはハードルが高かったのです。」

世界と日本を動き回り、買い手を探る中で得た感触も反映しながら条件を固めるまでおよそ2年。入札が行われる前の、民間企業に対する参加資格審査の段階では11の海外企業、9の国内企業が手を挙げた。しかし、入札までにはその中で手を組むペアが生まれなくてはいけなかった。

「及び腰になっている国内企業に対し、乗り気になっている海外企業が『空港経営のプロである自分たちがいるから安心してくれ。一緒にやりましょう』と、後押ししている様子は印象的でした。なんとか1つの連合が誕生し、入札。無事に売却先を決めることができました。」


国の成長戦略の、一歩目とこれから。

入札の後は、詳細な契約内容を詰めていき、2016年3月に売買が成立。プロジェクトのスタートから実に4年の月日が流れていた。最終的に入札したのは1つの連合にとどまったが、「入札資格さえクリアできれば是非参加したい」と意欲を示してくれた企業が国内外ともに複数いたことは、世界中を飛び回った岡田の交渉の成果と言えるだろう。

「途中、メディアからは売却価格などについて、高すぎると批判されることもありましたが、実際に交渉の相手となった民間企業の方々には、商品としての魅力、民営化することの社会的意義までも理解していただくことができました。『入札に参加はできないけど、応援している』という声をたくさんいただきましたし、その応援は、最後までやり切るための大きな力になりました。」

IGPIからは推進部長の岡田に加えて、海外とのつなぎ役となったアメリカ人メンバー、弁護士と会計士の日本人メンバーそれぞれが重要な役割を果たした。その誰もが、このプロジェクトをやり切ることが、日本の成長につながるという信念を持っていた。そして関西国際空港・伊丹空港の民営化を成功させて以来、岡田は次々に新しいプロジェクトを担当するようになった。

「全国各地の空港コンセッションなど、一気に加速した民営化をひと通り支援している形です。関西国際空港民営化プロジェクトでは、売り手である国・公共側の立場で携わりましたが、買い手側にとって難易度が高い案件では、民間に入ってサポートすることあります。官民どちらの立場にもなれるノウハウがあるIGPIだからこそ、この壮大な国の成長戦略に、もっとも効果的な役割を果たすことができるのです。」

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